厚生労働省が発表する「有効求人倍率」は、日本の雇用市場を示す重要な指標の一つですが、「現状を正確に反映していない」との指摘が多くあります。その理由を、インターネット上の情報と個人的な調査をもとに整理しました。
有効求人倍率はハローワーク経由の求人のみを対象としている
有効な求人倍率は、ハローワーク(公共職業安定所)に登録された求人と求職者のデータのみをもとに算出されているため、民間の転職サイトや人材紹介会社経由の求人が含まれていません。
💡 問題点:民間求人市場の影響を反映しにくい
- 実際の転職市場では、企業の多くがリクナビ・マイナビ・dodaなどの民間転職サイトや人材紹介会社を利用して採用活動を行っています。
- 特に、大手企業や専門職の求人はハローワークではほとんど扱われないため、求人数が少ないよりも少なくされることがある。
📌参考情報
ハローワークの求人は、中小企業や非正規雇用の募集が多い傾向があるため、「求人は多くても、実際に求められる仕事と合っていない」ケースもあります。
「水増求人」が含まれている
有効求人倍率の計算に含まれる求人数の中には、実際には採用の意志が弱い「架空求人」や継続「掲載求人」が含まれていることが指摘されています。
💡 問題点:「実際に採用される求人」とのズレ
- 助成金目的のダミー求人
- 一部の企業は、雇用助成金を受け取るために形式上の求人を出しているケースがあります。
- 一度採用済みでも求人を削除しない
- 採用活動が終了していても、ハローワークの求人データに残っていることがあるため、実際の求人数よりも多くカウントされる。
- 一つの求人を複数のハローワークに出ている
- 一つの企業が複数の地域のハローワークに同じ求人が出ている場合、それぞれカウントされてしまいます。
📌参考情報
ハローワークの求人には「本当に働きたい人」と「実際に採用したい企業」のミスマッチが多く、求職者が応募しても採用につながらないケースがあります。

「求職者」の定義に問題がある
有効求人倍率の計算には、「求職者」としてカウントされる人の範囲が限定されているため、実際の労働市場の状況を正確に反映していない可能性がある。

💡 問題点:「隠れ者」がカウントされない
- 仕事を探していない人(求職活動をしていない人)は含まれない
- 例:「仕事を探しているが、ハローワークには登録していない人」は求職者にカウントされません。
- そのため、実際の失敗率が高くても有効な求人倍率が高く見えることがある。
- 非正規労働者フリーやランスの現状を反映しにくい
- 「とりあえずバイトや派遣で食いつないでいるが、実は正規を希望している」という人も、かなり仕事をしているため「求職者」にはカウントされません。
📌参考情報
継続率の低下と有効求人倍率の上昇が同時に起きている場合でも、実際には「労働市場から退出した人」がほんのわずかの可能性もある。
業種や地域による偏りが大きい
有効求人倍率は全国平均で発表されるが、実際には業種や地域によって大きなばらつきがある。
💡 問題点:「求人が多い業界」と「求職者が多い業界」のズレ
- 人手不足が深刻な業界(介護・建設・飲食)では求人倍率が桁違いに高い
- 例:介護業界では有効求人倍率が4.0倍以上になることもあるが、これは求職者が少ないだけであり、一般的な業界とは状況が異なる。
- ホワイトカラー職や専門職では求人倍率が低い
- 例、一般事務やマーケティング職の有効求人倍率は1.0倍以下のことが多い。

💡 問題点:地域格差が大きい
- 東京・大阪などの都市部では求人倍率が高く、地方では低い傾向があります。
- しかし、地方では求人があっても「給与が低い」「希望の余地がない」などの理由で求職者が応募しないケースもあります。
📌参考情報
「全国平均の有効求人倍率が1.3倍」と発表されており、実際には「都市部のオフィスワークでは1.0倍以下、地方の介護職では5.0倍以上」など、業種や地域によって全く異なる数字になっています。

「人手不足=景気が良い」とは限らない
政府は有効求人倍率の上昇を「景気回復の証拠」とすることが多いが、今後は限定的ではない。
💡 問題点:「低賃金労働の増加」が影響している可能性
- 人手不足が深刻なのですが、「体力が低すぎる」「労働環境が悪い」業界が多いです。
- 求人数が増えていても、「働きたい人がいない」求人が増えているだけの場合もあります。
- そのため、有効求人倍率が高くても「労働環境が良くなった」とは言えません。
📌参考情報
コンビニ、介護、運送業などでは「人手不足」と言われているが、これは「低賃金の仕事を希望する人がいる」だけであり、景気回復とは関係がない。
結論:有効求人倍率は、雇用市場の一面しか示されていない
✅ハローワークの求人のみを対象にしているため、現状とズレがある
✅水増求人や補助金目的の仮求人が含まれている
✅求職者の定義が厳しく、実際の「隠れ者」を反映できていない
✅業種や地域による偏りが大きく、全国平均の数値だけでは見た目が見えにくい
✅有効求人倍率が高くても「優良のブラック求人」が増えている可能性がある
👉そのため、有効求人倍率だけで「雇用が改善している」と判断するのは危険であり、より多角的な分析が必要です。