令和8年・令和9年に向けた最新法改正情報
不動産登記と譲渡担保制度が大きく変わります
そんな声が増えている今、令和8年から9年にかけて不動産登記制度と担保法制に大きな転換が訪れます。 司法書士実務・不動産取引・企業経営に直結する3つの主要改正を、実務の観点からわかりやすく整理します。
概 改正の背景と全体像
近年、所有者不明土地問題への対応や経済活動の活性化を目的として、不動産登記制度・担保法制の見直しが急速に進んでいます。令和8年から令和9年にかけては、登記実務や企業活動に大きな影響を与える法改正が相次いで施行される予定です。
1 職権による住所等変更登記制度(スマート変更登記)の開始
令和8年4月1日から、不動産登記制度において大きな転換点となる「職権による住所等変更登記制度」がスタートしました。
これまでの課題
これまで不動産所有者が引越しや婚姻などによって住所・氏名を変更した場合、変更登記は所有者自身が申請しなければなりませんでした。しかし、変更登記が行われないまま長期間放置されるケースが多く、これが所有者不明土地問題の一因となっていました。
新制度の仕組み
不動産所有者があらかじめ法務局へ氏名・生年月日・メールアドレスなどの「検索用情報」を申し出ることで、法務局が住民基本台帳ネットワークシステム等を活用して住所変更を把握し、所有者本人の確認を経た上で職権による変更登記を実施できるようになります。
https://www.moj.go.jp/content/001459424.pdf
2 譲渡担保法の制定で担保ルールが明文化
令和7年に成立した「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律(譲渡担保法)」は、担保法制の分野における歴史的な大改正です。
これまでの状況
譲渡担保とは、債務の担保として財産の所有権を債権者へ移転しておき、返済完了後に所有権を戻す仕組みです。企業間取引や金融実務において広く利用されてきましたが、これまで明確な法律上の規定はなく、判例や実務慣行によって運用されてきました。
新法で明確化される主なポイント
不動産を保有していなくても、在庫や売掛金を担保として資金調達できる可能性が広がります。近年注目されているABL(動産・債権担保融資)の普及にも追い風となるでしょう。法的な予見可能性が高まることで、企業・金融機関ともに利用しやすい制度となります。
https://www.moj.go.jp/content/001458450.pdf
3 不動産登記で「国籍」の申出が必要に
令和8年10月5日からは、不動産登記規則の改正により、所有権移転登記などを申請する際に申し出る検索用情報へ「国籍」が追加されます。
改正の背景
現在、検索用情報としては氏名・住所・生年月日などが利用されていますが、外国人による国内不動産取得の増加や、登記名義人の正確な識別の必要性から、今後は国籍も本人特定情報の一つとして扱われることになります。所有者に同姓同名のケースも少なくなく、住所や氏名だけでは本人確認が十分でない場合があるためです。
https://www.kanpo.go.jp/20260331/20260331g00075/20260331g000750067f.html
令和8年から令和9年にかけての法改正は、「登記情報の正確性向上」と「経済活動の円滑化」を大きな柱としています。
職権による住所等変更登記制度の開始により、不動産登記はこれまで以上にデジタル化・自動化が進みます。国籍の検索用情報追加により本人確認の精度が高まり、所有者不明土地対策も一層強化されます。さらに、譲渡担保法の創設によって、これまで判例法理に依存していた担保制度が法律として整備され、中小企業の資金調達手段の拡充が期待されます。
これらの改正は、司法書士・不動産関係者だけでなく、不動産を所有する個人・事業者にとっても重要な内容です。今後の制度運用を注視しながら、必要な対応を早めに検討することが求められるでしょう。
